お父さんコーチには心臓に悪いかもしれませんが、お医者様は「STOP」かけます!

私は医者ではありませんが、多くのお医者様と対峙してきました。
緊急事態や突発的なケガにどう向き合うべきか、対処方法をあなたにお伝えします。

医者は必ず止めます

はじめに私の体験談から。

小学校5年生の時に「野球肘」を医者から宣告されました。
診断にあたった先生がこうおっしゃいました。
「肘に溜まったボロボロの軟骨が骨になるまで投げないでね^^」
と、ニコやかに言われたのを今でも覚えてます。

確かにレントゲンを見ると、肘の骨の周りにうっすらと骨らしきものが無数にありました。
「この子(骨)たちが神経を刺激して痛いんだよ~」
「結構痛いよね~」
「しばらく野球は止めておこうね^^」

肘を触った程度ではわかりません。
レントゲンを見て初めて衝撃を受けたと言うか、痛みの原因が分った時は素直に症状を受け止められました。

その後、医者と母親が話していた会話ですが、
「手術して取り除くことは可能です。」
「早期に野球は開始できます。」
「ただリスクがあります。それはメスを入れる事。その他には、取り除いた軟骨は骨の成長に必要なものなので、また軟骨ができます。野球をしていれば、再生した軟骨をまた砕く可能性が十分考えられます。どうします?^^」

お医者さまは「続けるのを止めなさい」と遠回しに言ってます。
母親は「手術はしません。そのままにします!」と即答。

結論、完治までには1年を要しました。
1年は相当な月日です。

唯一の失敗

私が指導していた野球チームは子供たちに無理をさせない努力をしました。
必ず練習前、アップ時に雑談程度で身体検査・簡易的な健康診断を決行。

「なんか今日キレないねぇ~。痛いとこあるんじゃないの?」
「元気ないじゃん。どうした?」
「投げ方変えた?バランスは良くなったけど、実はどこか痛いとか?」

子供たちは痛いところがあってもなかなか言い出さないので「きっかけを作る」様に心がけました。
たまにですが、子供たちから「肘が痛い」「膝が痛い」「実は熱があります」と言ってくれる様な環境にまでなりました。

しかし、実は私、大失敗をしています。
それは私の息子が熱を出した時です。

その日は大切な大会の日。
息子の代は同級生が9人在籍するものの、下級生の応援がなければ、試合をすることが不可能な年代でした。

試合当日、監督と私とで、必ずスターティングメンバーのすり合わせをします。
もちろん監督の意向を尊重するカタチで、私は助言する程度のすり合わせ。
このすり合わせは結構大切で、ほとんどが「体調面」の話し合いです。

ですが私は息子の発熱を隠してました。
下級生への負担軽減とまぁ~なんとかなるでしょ!!と言う軽い気持ち。
これが大失敗です。

当時のチームは個性豊かで、足が速い選手もいれば、バントを必ず決める選手もいる。
十人十色の面白いチームでした。

ただ、爆発力が足りないチームでもありました。
息子は三振が多いものの、得点圏に走者を置いた時の一発屋として、花粉程度の微量ですが期待をしていました。

はじめて怒った監督

ピッチャーを任された息子は2回持たず、KO。
その為か、攻守のリズムが悪く、試合も残念な結果となりました。

試合後、監督が私に言いました。
「息子さん熱ありましたよね。」「なんで言ってくれなかったんですか?」
「私には責任があります!」「子供たちの健康管理と、二度と戻ってこない大会に臨む為の最善策」
「その二つを考えることが私の唯一できることです!」

言葉は少なかったですが、私の胸に無数の矢が刺さった言葉でした。
勝利至上主義の私の思い上がりが招いた結果です。

監督は私より年下ですが、「信頼関係」に亀裂が入った一日となりました。

この日は親子共々OKを食らった日です。

間違いなく日頃から、子供たちの健康管理には気を付けていたハズ。
ですが、自分の息子の健康管理。 盲点です。言い訳の余地なしです。

今となっては笑い話になってますが、監督から言われた言葉は今でも教訓となってます。

ケガと向き合う

ケガは必ずします。
熱も出します。

ケガをした場合、発熱した場合は、受け入れる努力をお勧めします。
ケガしたから負けた。とか。大切なこの時期に発熱するかね?とか。
必ず誰かが言い出します。

そうではなくて、一旦ケガや発熱を受け入れましょう。
そのケガはひょっとしたら、防げるケガだったかもしれません。
防げなかった指導者に原因があるかもしれません。

周りの大人のプレッシャーを受け、発熱したのかもしれません。
負けてはいけない、勝たなきゃいけない。
未成熟な体と心にはそのプレッシャーが熱となって出たのかもしれません。

ケガの種類(知っている程度で説明)

ケガの種類を2種類に分けて考えると、『外傷』と『障害』があると思います。
先ほどの私の野球肘は『障害』です。

『障害』とは、繰り返しの行為によって、体にストレスが蓄積し、その結果故障を招くものを言います。

例えば、肘や肩を痛める投球障害・疲労骨折。下半身酷使による、アキレス腱炎断裂・肉離れなど。
原因は『やりすぎ』もしくは『やり方が悪い』とも言われてます。
学童の場合は、体が完全に成長できておらず、運動による負荷と体の強さのアンバランスが生み出す結果といえます。
この障害は『避けられる怪我』として多くの識者が投球制限、試合間隔の確保、冬場の対外試合の禁止等、様々な対処策を発信し実践に移しています。

しかし、素晴らしい有能な識者が対処策を発信し、指導者がそれを実行しても、子供たちには個人差があり、体格差、体力差があります。
差のある子供たちが体力のある子供と同じ負荷の運動をすれば、故障を起こす可能性が増えます。

もし子供が『障害』を負ってしまった場合は、医者の指示指導を仰ぐ他ないです。

アクセルとブレーキのバランス

子供たちは多少の痛みは我慢します。
成功体験を多く積んだ子ほど我慢します。

指導者は練習中止を含めた負担の軽減および適度な休養・休暇日の設定。
ケガ再発防止の為の専門的なストレッチ、筋肉強化、フォームの矯正などなど。
様々な対処策を求められる事が多くなりました。

成長期の子供たちは、発育段階の個人差が顕著なことや、軟骨など発育途中で弱い部位を痛める確率が高いため、特に『障害』には注意が必要と言えます。
痛めた場合でも、成長期なので早期対処すればケガの完治が非常に高いと言えます。

大変なのです。指導者って。

一方『外傷』とは、目で見て怪我となんとなくわかるもの。(簡単でスミマセン)
流血してればそれはケガです。
小学校低学年の子が流血した場合、「この世の終わり」くらい騒いで泣きます。
抱っこしてヨシヨシして泣き止めばラッキー。
大概、半日日陰で半べそかいてます。

「ツバでも着けてりゃその内治る!」は昔の話。
ケガするくらいなら野球辞めます。って子供も多くなってきてますので、ケガの予防と事前対策は不可欠な時代です。

が、大会間近の大切な時期には練習に熱が入ります。
これが盲点です。
指導者の熱量と子供たちの熱量が比例した場合、子供たちの体が先にダウンします。
その結果大きな『外傷』を生む結果となります。
指導者含め、周りの大人たちは冷静に冷静に。

子供たちは大人が思っている以上に敏感で、大人の期待に応えようとします。

なので、冷静に冷静に。

「しない事」も指導

『外傷』の放置や『障害』の見過ごしは、野球どころか他競技まで出来なくなるケースがあります。
症状が深刻な場合は、日常生活にも支障をきたします。

大好きな野球が出来なくなることは、子供にとって「挫折感」や「心の傷」を残すことも考えられます。
「夢をあきらめることを覚えた心」や「夢をあきらめるしかない体」はなかなか取り戻すことができません。
楽しかった野球をもう一度するんだ!と言う「強い心」を養う必要があります。

『障害』による挫折がその子供の「運命」と割り切る前に、『避けられるケガ』ならば避けられるよう指導者は心しておかなければなりません。

深刻なケースは、一旦競技から離れましょう。
プレーをしない。プレーを見ない。しないさせないも指導の一つです。
体が癒えて、心が競技に戻りたくなるまで、待ちましょう。

必ず子供たちはどこかのステージで戻ってきます。

ケガをさせない、障害を残さない、そして心のアフターケア。
これも指導者の大事な使命、責任ではないでしょうか。

がんばれ指導者。町の英雄。

 

***ホームランの旅***